JOURNAL

循環系とは?「血液と血管」は「運び屋さんと道路」

2021.07.03

循環系のはたらきとしくみ

 私たちが生きていくためには、「身体中の細胞への酸素や栄養物の供給」と、「細胞の活動(代謝)で生じた二酸化炭素や老廃物の回収」が行われ続ける必要があります。この役割を担っているのが、心臓・血管・血液で構成される「循環系」と呼ばれる身体のシステムです。

 血液は、栄養分を胃腸や肝臓で受け取り、全身から回収した老廃物は腎臓で排出します。胃腸・肝臓・腎臓は全身を巡る血管と同様、心臓から出発するときは大動脈から始まり、帰りは大静脈で心臓に戻るルートで、これを「体循環」と呼びます(もう少し正確に言うと、内臓を含む心臓から下の部分は下大静脈から心臓に戻り、頭部や腕・手など心臓より上の部分は上大静脈から戻ります)。

 また、全身から二酸化炭素を回収して心臓に戻った血液は、肺動脈を通じて肺に向かい、二酸化炭素を手放して酸素を受け取ったのち、肺静脈から心臓に戻り、そして大動脈から全身へと向かいます。このように、肺だけは心臓と肺動脈・肺静脈でつながっているルートになっていて、これを「肺循環」と呼びます。

血液は運び屋さん、血管は道路

 この役割を日常生活にたとえると、血液は「運び屋さん」、血管は「道路」のようなもの。心臓から出発した血液は、動脈血管を通って全身の様々な器官・組織に向かいます。向かった先の組織では、血液は酸素や栄養物を配達すると同時に、二酸化炭素や老廃物を回収。こうして身体のすみずみに配達と回収が行われた後、血液は静脈血管を通って心臓に戻るのです。

 このように循環系は、血液という運び屋さんと血管という道路からなる物流システムのようなもの。心臓の状態ももちろんですが、血液と血管の状態によって、配達や回収の能力が決まってきます。

 運び屋さんの数が少なければ、十分な量の荷物を運べないのと同様、酸素を運ぶ赤血球の数が少ないと貧血状態になります。また、運び屋さんの持っている荷物を運ぶ道具や器具、たとえば荷台や荷崩れ防止のベルトなどに不具合があっても、十分な量の荷物を運ぶことができませんね。赤血球も酸素を運ぶための道具としてヘモグロビンというたんぱく質を持っています。このヘモグロビンに異常があると、いくら赤血球の数が十分にあったとしても、やはり貧血になってしまうのです。

 道路にたとえた血管のうち、大動脈や動脈は高速道路や幹線道路のようなものです。大勢の運び屋さん(血液)が通るため、運び屋さんの積み荷が多すぎると、道路(血管)は傷みやすくなります。この道路の傷みは、年齢とともに悪化していき、よく知られる動脈硬化の状態に。これらの高速道路や幹線道路を大切に使うためには、私たちは自分の体内の運び屋さんが何をどれだけ積んでいるのか、しっかり注意する必要があります。

 一方で、毛細血管は細胞という各家庭の前を通る一般道や私道のようなもの。これらの道が寸断されれば、その地域の家庭への配達やゴミ回収ができなくなりますね。そのまま回復しなければ、いずれゴーストタウンのような状態になるでしょう。毛細血管にも血流のない「ゴースト血管」と呼ばれるものがあります。ゴースト血管の周辺の組織はゴーストタウンのように活動が低下してしまい、不調や老化に向かっていきます。

自分の「道路」は自分でメンテナンスを

 最後に、運び屋さんや道路ではたとえられない、大切なことがあります。道路は自治体や国などの行政がメンテナンスしてくれても、血管は(もちろん血液も心臓も循環系はすべて)他人任せではなく、持ち主であるあなた自身が主体的にメンテナンスしなければなりません。循環力を今よりアップさせるかダウンさせるかは、あなた自身なのです。ぜひ、正しい知識を身に付けて、健やかな心身を保っていきましょう。

医学博士 高木健太郎