JOURNAL
血液の役割とその健康状態
2021.07.03
血液の役割は4つ
「血液の健康状態」と聞いて、どんなことをイメージしますか?サラサラならば血流はスムーズで健康、ドロドロなら血流が滞りがちで不健康、とイメージする方が多くいらっしゃるかもしれません。しかし実は、「血液の健康状態」と「サラサラ・ドロドロ」は、単純にイコールで結びつくものではないのです。
血液の健康状態は、血液としての役割をどのくらい果たしているのか?血液の状態を通じて身体のどこかに心配はないか?ということを表すもの。例えば、血液に酸素や栄養物を運ぶ力がしっかりあれば、心臓や血管と力を合わせることで、運び屋さんとしての役割を果たすことができるのです。血液の役割として、次の4つが挙げられます。
役割① 酸素・栄養物の供給と二酸化炭素・老廃物の回収
役割② 様々なホルモンを必要なところに運ぶ
役割③ 細菌やウイルスを倒す免疫細胞を運ぶ
役割④ 全身に熱を運ぶ
以上のうち、役割①の中の二酸化炭素・老廃物の回収と、役割④の効率は、血液以外のメカニズムにも左右されますが、役割②と③の効率は血液の健康が直結しています。これらの役割の指標は、健康診断などで受ける血液検査に含まれていますので、いくつかの検査項目をご紹介しましょう。もし、ご自身の検査結果をすぐ取り出せるならば、お手元に置いてお読みください。
酸素運搬の指
まず、役割①の酸素を運ぶ役割に関係するのは、赤血球数、ヘマトクリット値、血色素量です。赤血球数は、その名の通り赤血球の数のこと。ヘマトクリット値は、血液に占める血球の体積の割合のことですが、血球のほとんどは赤血球のため、血液に占める赤血球の体積の割合と考えて構いません。通常は血液の半分弱くらいを血球成分が、残り半分強を血漿という液体成分が占めています。血色素量は、赤血球の中に含まれる酸素と結合するたんぱく質であるヘモグロビンの量のことです。
これら赤血球数、ヘマトクリット値、血色素量を総合して赤血球の状態を判断します。これらが基準範囲より高い場合は、「多血症」という、赤血球が異常に多い疾患が考えられるでしょう。多血症では、血液がドロドロに濃くなって血流が悪くなり、全身に酸素や栄養物を十分に送り届けられなくなります。その結果、頭痛、めまい、のぼせ、耳鳴りなどが起きやすくなり、血栓ができやすくなるので注意が必要です。
それでは、基準範囲より低い場合は血液サラサラだから健康なのか、といえばそんなことはなく、酸素の運び手が少ないので貧血が考えられます。貧血もまた全身に酸素を十分送り届けることができないため、疲労感、倦怠感、頭痛、めまいなどの不調につながります。
栄養物・ホルモン運搬の指標
次に役割①の栄養物や役割②のホルモンの運搬に関係する項目として、アルブミンがあります。アルブミンは肝臓で合成されるたんぱく質です。アルブミンにはまた、血液中の水分調節という大変重要な役割もあります。
身体の隅々で血管(毛細血管)と周りの細胞の間で栄養物や老廃物のやり取りをするとき、同時に水分も行き来しています。この水分の行き来は、毛細血管内を流れる血液の水圧、毛細血管の壁の細胞(血管内皮細胞)の隙間の具合、そして血管内外のアルブミンや塩分などの濃度差による浸透圧によってバランスが保たれているのです。
血中のアルブミンが少ないと、血管から出た水分を戻せないので、むくみやすくなります。むくみ自体も不快ですが、アルブミンが正常値より低いと栄養不良や、肝臓や腎臓などの問題がある可能性があるので、注意が必要です。
免疫の指標
最後に役割③に関係するのは、白血球数です。白血球数が基準範囲より多い場合は、肥満、喫煙、ストレスなどが原因の場合が多く、感染症では増加・減少ともに起きる場合があります。赤血球数、血小板数と併せてみることで、白血病などの重大な血液系の病気に気づくこともあるのです。
その他の血液検査項目
以上、血液の役割に直結する項目を紹介しましたが、検査結果を見ると他にもGOT、GPT、中性脂肪(TG)、各種コレステロール、空腹時血糖、尿酸値…など、多くの項目があると思います。いずれも血液の状態を通じて身体のどこかに心配はないか?ということを調べるための項目です。検査結果に説明がついていると思いますので、ぜひ参考にしてくださいね。
医学博士 高木健太郎