JOURNAL
血管にまつわる病気や不調と、健康法
2024.04.01
血管の役割が十分に果たせないとき、身体のどこかに不調が現れます。そこで血管にまつわる病気や不調と、日ごろの心がけでできるケアについてご紹介しましょう。
動脈に関する病気と健康法
まず、動脈の代表的な病気として「高血圧」と「動脈硬化」が挙げられます。いずれも自覚症状に乏しく、動脈硬化ではある日突然、心筋梗塞や脳梗塞のような命に関わる状態になって初めて気づくこともあるのです。
高血圧も動脈硬化も、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に感染すると、重症化しやすいことが知られています。どちらの病気も年齢とともに進行するので完全に防げるものではないのですが、日ごろの心がけでかなり違ってきます。
高血圧と動脈硬化には、軽めの運動や禁煙など共通する対策が多いです。食品では、リスクが上がるので控えたいものとして、飽和脂肪酸(肉の脂身、ひき肉、鶏皮、ラード、パーム油など)やトランス脂肪酸の多い食品(スナック菓子、マーガリン、ファストフード)など。逆に積極的に摂りたいものは、食物繊維が多く含まれる食品(大豆製品、野菜、海藻、きのこ、果物、玄米のような末精製穀類)や魚のEPAやDHAに代表されるオメガ3脂肪酸です。高血圧対策では、減塩や節酒も推奨されます。
毛細血管に関する不調と健康法
毛細血管に関係する不具合として、「ゴースト血管」を聞いたことのある方もいるでしょう。「ゴースト血管」とは、血液が流れなくなった毛細血管で、血流のない状態が続くと毛細血管そのものがなくなってしまう状態のこと。肌の老化の他、認知症や骨粗しょう症など様々な病気の発症や進行と関係していると言われています。ゴースト血管によって直ちに命に関わるわけではありませんが、徐々に進む不調・病気・老化などにつながっていると言えます。
ゴースト血管の予防には、毛細血管の血流を保つことが大切です。運動で血流をアップさせ、入浴と睡眠で血管をゆるめることができます。血流を良くする食材としては、ネギ類(タマネギ・長ネギ・小ネギなど)とショウガがオススメです。また、毛細血管を増やす食材として、シナモン、ヒハツ、ルイボスティーなどが知られています。
静脈・リンパ系に関する不調と健康法
静脈・リンパ系の視点から考えると、真っ先に思い浮かぶのが「むくみ」。特に四肢では、静脈とリンパ管にある逆流を防止する弁と筋肉の収縮と弛緩で生まれる「筋ポンプ作用」により、心臓方向に流れを保つ働きがあります。運動不足だと筋ポンプ作用を活用していないので、静脈やリンパ管から心臓方向への流れが停滞してしまい、組織から新たに水分を回収することができません。一方、動脈からは常に血流が来て毛細血管から組織への液体の移動は続きますので、組織の水分も溜まってしまいます。これが「むくみ」です。
適度に運動やストレッチをして骨格筋ポンプを働かせることや、骨格筋ポンプが十分働くように筋肉をつけることは、むくみの予防に効果的です。もし、むくみで足や腕が太くなったからといって、急に食事量を減らすダイエットや水分摂取を控えるのはNG。急に食事量を減らせば体重とともに筋肉も減り、筋ポンプが働きにくくなってしまいます。また、水分摂取を控えても静脈やリンパ管からの回収を促すことはできません。むくみは身体の水分量が多い状態ではなく、体内の水分のバランスが悪い状態なのです。
寝転がって何かに足をのせるなどすると、むくんだ足が楽になった経験はありませんか?あれは、重力によって足から心臓に流れやすくなるためです。つまり、末梢から心臓に向かって血液が流れやすいようにすることが、体内の水分のバランスを整えるコツです。 例えば、マッサージは心臓の遠い側から近い側に向けて行います。足首からふくらはぎ、ふくらはぎから太ももに向かってマッサージしましょう。顔の場合は、内側から外側に向けて行います。
服装に関しては、胴体を締め付けるような下着やベルトはむくみにつながる場合があります。逆にむくみ解消をうたう着圧式のストッキングやソックスのようにふくらはぎや足首側から圧迫するタイプのものはむくみの軽減につながるでしょう。
さいごに
血管にまつわる病気には、以上に紹介した他にも感染症をよるものや生まれつきのもの、他の病気やケガをきっかけにしたもの、さらには原因不明の難病として国に指定されているものもあります。これらの病気は医師の診察のもとで治療やケアが必要です。
また、むくみなどは病気のサインとして現れる場合もあり、この記事で紹介したケアの方法で解消できない場合には、医師の診察を受けてみることをおすすめします。
しかし、もともと健康な身体なのに、良くない生活習慣のために血管の衰えを加速させて病気や不調を招くのは大変もったいないことです。血管は血液や心臓と並んで循環力の主役の一つです。できることから始めてみましょう。
医学療法士 高木健太郎